「憂(うれい)」

むかしの人の詩にありました

君看(み)よ、双眼の色

語らざれば、憂い無きに似たり

憂い・・・・・・・が無いのではありません

悲しみ・・・・・・が無いのではありません

語らない、だけなんです

語れないほど、深い憂い・・・・・・・だからです

語れないほど、重い悲しみ・・・・・・だからです

人にいくら説明したって

まったくわかってもらえないから

語ることをやめて

じっと、こらえてるんです

文字にも、ことばにも

到底表わせない

深い憂い・・・・・を

重い悲しみ・・・・を

心の奥深く、ずっしり沈めて

じっと黙っているから

眼(まなこ)が澄んでくるのです

澄んだ眼の底ににある

深い憂いのわかる人間になろう

重い悲しみの見える眼を持とう

君看よ、双眼の色

語らざれば、憂い無きに似たり

語らざれば、憂い無きに似たり

/相田 みつを

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