仕事の理念

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職業人生とは、いかにも不安定なものである。就職難を勝ち抜いて、ようやく
定職を見つけたと思えば、予想もしなかった配属先に行く事になる事もある。

何とか、自分の思う仕事をさせてもらおうと、嘆願を重ねて行かせてもらった
部署に、とても共感できそうにない上司がやって来る事もある。それでも頑張
って、仕事をやり抜こうとしている矢先に病気になって、戦線離脱を余儀なく
される事もある。病気を治して戻った時には、申し訳程度の遣り甲斐しか残っ
ていない部屋が待ち受けている事もある。同期入社組はずっと先に進んで
いる。とても不運な事のように見える。

しかし、キャリアの熟練者からは、それはスキーの初心者がいきなりゲレンデ
の頂から斜めに、心もとなく滑り始めた様子に似て見える。思ったよりも足元
は不安定で、慎重にならざるを得ない。横滑りさせながら、ゲレンデを斜め
に横切って行く。徐々にスピードが上がり、目の前にゲレンデの端が見えて
くるが、うまくエッジを切る事ができない。このまま谷へ落ちるのか、その
向こうを滑降して林に突っ込むのか、それとも転んで怪我をするのか。

何とかターンをしなければならないと、不慣れな腰つきで思い切って方向
転換を試みたら、それが中途半端に回転したばかりに、スキーは真下を
向き直滑降。止められない加速を感じながら、いくつかのこぶをバウンド
して乗り越え大転倒。ようやく立ち上がった時は、心も身体も傷だらけ。
仲間はとっくに器用なシュプールで霧の向こう側だ。

キャリアを取り巻く環境は、元々不安定なものである。それが前提であり、
それがキャリアの醍醐味でもある。小さな会社が、社会や市場や競合の
環境変化を受けながら、経営をしていく姿にも似ている。キャリアは自分
で経営するものなのだ。それを「キャリア自律」と呼んでいる。

誰でも始めはうまくいかない。運良く平穏な環境に助けられてうまくい
っているように見える人は、経営技術が身につかなくて、いつか変化が
訪れた時に、既得権益ばかりを叫ぶ人になってしまう。

まずは、気持ちを落ち着けよう。考えながら、何度かPLAN-DO-SEEを
繰り返しているうちに、キャリアの経営が身についてくる。自分の価値
観を元に、「仕事の理念」を見つけよう。きっとその向こう側に「ビジョン」
が見えてくるはずだ。「ビジョン」を満たすために「周囲の環境変化」を
分析しよう。組織も市場も競合も動いているはず。

そして、自分の「能力」を点検しよう。ビジネスパースンとしての知識・
技術、専門分野のスキル、更に行動特性やものの考え方。順番に
考えているうちに「戦略」と「計画」が見えてくる。あとは「実践」
しながら「管理」する。あきらめてはいけない。スキーの醍醐味は、
味わった者でなければわからない。

/山本 正樹(理想経営代表、経営コンサルタント)
20050910
♪Morning glory in 横浜 朝から暑くてクラクラしていたら、道端に咲く朝顔から「顔晴って!」と励まされたような気がした。与えられた環境の中で、文句一つ言わずに、命を全うする道端の花々。いつも大切な事を教えられると同時に、尊敬の念を抱く。

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