2001 年 6 月 23 日 のアーカイブ

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大工

2001 年 6 月 23 日

ある裏長屋に、朝から酒を飲んで、仕事をしない大工がいました。

元々腕は確かで、仕事もできたのですが、どうも人に使われるのが性に

合わずにいました。大家は、家賃を滞納する大工を、何とかしたいと

思っていました。そこで大家は、大工にこう持ちかけました。

大家「お前さんは、酒が好きなようだね。どうだい、明日から毎晩の

   晩酌の酒を、私が飲ませてやろう。その上、家賃も免除してやる」

大工「何言ってやがんで~。そんなムシのいい話をして、おいらを追い

   出そうって魂胆だろう?」

大家「そんな事はないさ。そんな魂胆なんてありゃしない。ただお前の

   大工の腕を見込んで、お願いがある」

大工「何で~、そのお願いってのは?」

大家「この長屋もかなり古くなってきて、戸板や台所何かもガタが出てきた。

   そこで、明日から一軒一軒回って、修理しっちゃ~くれねえかい」

大工「何で~、それくらいの事で、酒も飲ませてくれて、家賃もタダになんなら、

   やってやろうじゃね~か」

大家「その代わり、住人からお礼を一切もらっちゃいけないよ。それが条件だ」

こうして大工は毎日、一軒一軒長屋を回って、「どこか壊れた所はね~かい?

直してやら~」と言って、無料で修理をし始めました。すると直してもらった方は、

「すまないねぇ。少しだけど取っといておくれ」と言って給金を出すが、大工は一切

受け取らない。そうこうしていると、長屋の住人が時々、「いつもすまないねえ、

少しだけど食べておくれ」と言って、夕飯時に惣菜や酒を差し入れをしてくれる

ようになりました。そうなると大工も、人の役に立っているようでうれしい。

いつの頃からか、腕もいいし、人柄もいいと評判になってきました。そして色々な

所から、仕事が舞い込んでくるようになります。そうなると、一人では手が回らない。

弟子を雇うようになり、いつのまにやら立派で、評判の大工の頭領になっていましたとさ。

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