2008 年 10 月 19 日 のアーカイブ

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木を植えた男、エルゼアール・ブフィエ

2008 年 10 月 19 日

木を植えた男、エルゼアール・ブフィエ。場所は南仏、
プロヴァンス。時は20世紀初頭の事であった。

彼の家の周囲の村々は、その荒地ゆえに、気候も生活
も厳しく、そのせいか男も女も、老人も子供達でさえ、
エゴを剥き出していた。お互いに争い競い合い、疫病
のように自殺が蔓延(はびこ)り、多くの人が心を
病んでいた。

心落ち着いたこの男は、どんぐりを拾い集め、良い実
を丁寧に選り分けては、毎日毎日どんぐりを植えてい
った。地面に穴を掘り、1個入れては、穴を塞ぐ。1個
入れては、穴を塞ぐ。

そうして何年も、人の住まない荒れ果てた地に、淡々
と木の実を植え続けた。妻子を亡くし、羊飼いをして
暮らしていたこの男が、荒れた土地を何とかしようと
始めた事だった。

3年が経ち、10万個の実から、2万本の新芽が出た。
ブフィエはこの時、50歳を越えていた。リスやネズミ
に齧(かじ)られ、風雨に晒(さら)され、駄目になる実
は10万分の8万。それでも男は、たゆまず木を植える。

黙々と植え続け、60歳を過ぎても、二度の世界大戦
を乗り越えながら、たった一人で樫(かし)を植え、
ブナを植え、樺(かば)の実を植え続けた。

年月を経て、その荒地は森になった。水が湧き、小川
が現れた。森の中は穏やかに風が流れ、風は種を運び、
草原が広がった。生きたもの達が生まれ、動物達が
戻って来た。その速度はゆっくりであったが、確実に
生命が蘇ったのだ。

村には活気が生まれ、希望の明かりが灯(とも)り、
子供達の笑い声がこだました。以前の住人とはうって
変わって、人々は徳と幸せに満ちていた。

エルゼアール・ブフィエの数十年に及ぶ無私の行為は、
荒地を蘇らせ、生命を蘇らせ、人々の希望を蘇らせた。

たった一人で、世界を変えた。

その男は、自分の徳のある行為を誰に告げる訳でもなく
1947年、バノンのホスピスで、穏やかに息を引き取った。

P.S Hさん、素晴らしい物語を教えて下さり、どうもありがとうございました!
20081019
♪三島大社の天然記念物、樹齢100年以上の金木犀。日本にも、エルゼアール・ブフィエのような人がいたんだろうか? 絶対いたと思うね。世界中にいたんだよ、そして今も! 次回は是非、満開の時に来てみたい。木に咲く花って大好きだなぁ。100年以上前に金木犀を植え、ここまで命を繋いでくれた全ての人達に、心から感謝したい。

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